キャリアランタン
Quit & Move

退職届と退職願、辞表は何が違う?いつ・どちらを・どう出すか

退職届と退職願のどちらを出すか迷う会社員の女性。ベージュのジャケット姿で頬に指を当てている
キャリアさん

退職しようと思うのですが、「退職届」「退職願」「辞表」、どれを出せばいいのか調べるほど混乱してきました。

ランタン君

三つとも似ているようで、法的な意味も、出すタイミングも違います。順番に整理していきましょう。

退職を決意したとき、多くの人が最初につまずくのが「何という書類を、いつ出せばいいのか」という疑問です。ネットで調べても、記事によって説明がまちまちで、余計に不安になることもあります。この記事では、退職届・退職願・辞表それぞれの法的な位置づけと、実務上どちらを、いつ出すべきかを整理します。

この記事の使い方

「退職届・退職願・辞表の違い」の解説だけであれば、法律用語の整理で足ります。ただ実務でつまずくのは違いの理解ではなく、「いつ、どちらを出すか」の判断です。そのため本記事では、法的な違いの解説はコンパクトにまとめ、後半の「いつ・どちらを出すべきか」「順番を間違えるとどうなるか」に紙幅を割いています。

3つの書類の違いを一覧で整理する

まず結論から一覧にします。

書類法的な意味主に使う人撤回できる?
退職願「辞めさせてください」という“お願い”(合意解約の申込み)一般的な正社員・契約社員など会社が承諾する前なら、原則として撤回できる
退職届「辞めます」という一方的な意思表示(労働契約の解約告知)合意ができたあと、意思を確定させたい人会社に到達した時点で効力が生じ、原則として撤回できない
辞表「役職を辞めます」という意思表示役員・公務員・委任契約に基づく立場の人提出先・立場によって扱いが異なる

一般の会社員が「退職届」と「退職願」のどちらを使うか迷うケースがほとんどで、「辞表」は本来、会社役員や公務員など、雇用契約ではなく委任・任用関係にある人が使う言葉とされています。一般の会社員が「辞表を出す」と口にすることは多いですが、法的には「退職届」や「退職願」を指しているケースがほとんどです。

法的な違いの根拠

退職願と退職届の違いは、法律用語でいう「申込み」と「意思表示」の違いに由来します。

  • 退職願=申込み:会社に「承諾してほしい」とお願いする段階のもので、会社が承諾する前であれば、撤回できるのが原則です。
  • 退職届=意思表示(解約の告知):民法上、期間の定めのない雇用契約は、当事者の一方からの意思表示によって、一定期間後に終了させることができるとされています。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。 出典:e-Gov法令検索「民法」第627条第1項

退職届のように、一方的な意思表示によって契約を終了させる行為は、相手方に到達した時点で効力が生じ、その後は撤回できないと解されています。この考え方は、契約の解除に関する次の条文の趣旨とも重なります。

契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。/前項の意思表示は、撤回することができない。 出典:e-Gov法令検索「民法」第540条

ここだけは押さえる

  • 退職願は「お願い」で、会社の承諾前なら撤回できる。
  • 退職届は「一方的な意思表示」で、会社に届いた時点で撤回できなくなるのが原則。
  • 辞表は本来、役員・公務員など雇用契約以外の立場で使う言葉。一般の会社員は退職届・退職願で足りる。

編集部の判断: 法的な違いを覚えることそのものより重要なのは、次の章で説明する「出す順番」です。撤回できるかどうかの違いは、順番を間違えたときに初めて効いてくるためです。

いつ・どちらを出すべきか

実務上のおすすめの順番は、次のとおりです。なお、ここでいう「いつ」は書類を出す日ではなく、その前段階である口頭で切り出す日が起点になります。入社希望日が決まっているなら、その日から逆算した目安を退職日を逆算するツールで確認しておくと、書類を出すタイミングも自然と決まります。

引き止めが予想される/退職日をまだ相談していない場合

ステップ1→2→3の順で進めてください。退職願で意向を伝え、合意を経てから退職届に切り替える二段階が安全です。

引き止めの心配がなく、退職日もすでに合意済みの場合

ステップ2(退職願)は省略して構いません。ステップ1(口頭で伝える)→ステップ3(退職届)の順で問題ないと編集部は考えます。

  1. まず口頭で、直属の上司に退職の意思を伝える。 書類より先に、対話で伝えるのが基本のマナーとされています。

  2. まだ交渉の余地を残したい段階なら「退職願」を提出する。 引き止めの可能性がある、退職日をこれから相談したい、というときはこちら。

  3. 退職日・引き継ぎ・有給消化について合意できたら「退職届」を提出する。 合意内容を確定させ、後で「言った・言わない」にならないようにする。

  4. 役員・委任契約に基づく立場の人は「辞表」を使う。 一般の正社員・契約社員はここに該当しないことがほとんど。

順番を間違えるとどうなりやすいか

同じ「退職の意思を伝える」でも、順番によって起きやすいことは変わります。

ありがちな順番起きやすいこと正しい順番
いきなり退職届を提出する合意形成の機会がないまま話がこじれ、引き止めが強くなることがある口頭で伝える→退職願→合意→退職届
上司より先に人事へ提出する上司の管理責任の観点から関係がこじれることがあるまず直属の上司に伝える
繁忙期・プロジェクトの佳境に切り出す引き止めが強まりやすく、円満退職から遠のく区切りのよいタイミングを選ぶ

編集部の判断: 上の3つのうち、特に取り返しがつきにくいのは「いきなり退職届」です。退職願であれば会社の承諾前は撤回できますが、退職届は会社に到達した時点で撤回できなくなるため、迷いが少しでもあるなら退職願から始めることをおすすめします。

書き方の基本ポイント

退職願・退職届に共通する基本フォーマットは、次の要素で構成されるのが一般的です。

  • 冒頭に「退職願」または「退職届」と明記する
  • 「私儀(わたくしぎ)」から書き出し、退職理由は「一身上の都合により」で足りる(詳しい理由を書く義務はない)
  • 退職を希望する年月日を明記する
  • 提出日と、自分の所属部署・氏名、押印
  • 宛名は会社の代表者(社長)名にするのが一般的なマナーとされている

退職理由は、円満退職を目指すのであれば「一身上の都合」で十分です。会社への不満や、転職先の詳しい情報まで書く必要はありません。

編集部の判断: 迷ったときは「短く、事実だけ」を基準にしてください。書きすぎて減点されることはあっても、簡潔すぎることが問題になるケースはまずありません。

退職届・退職願の記入例(サンプル)

そのまま書き写して使える文例です。退職届と退職願は、表題と末尾の一文だけが違うと覚えておくと迷いません。

退職届私儀このたび一身上の都合により、来る令和〇年〇月〇日をもって退職いたします。令和〇年〇月〇日(提出する日)〇〇部 山田 太郎 ㊞〇〇株式会社代表取締役 〇〇 〇〇 殿
▲ 記入例(画像なので、画面幅が変わっても体裁は崩れません)

退職願にする場合は、表題を「退職願」に変え、本文の末尾だけを次のようにします。

このたび一身上の都合により、来る令和〇年〇月〇日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。

  • 「私儀(わたくしぎ)」は「私事ですが」という意味の書き出しです。
  • 退職日(令和〇年〇月〇日)は、上司と話して合意した退職予定日を書きます。
  • 宛名は会社の代表者(社長)名にし、自分の名前より上の位置に書くのがマナーとされています。

用紙や書式に法律上の決まりはなく、手書き・パソコンのどちらで作っても書類としての効力に差はないとされています。会社に所定の様式や提出方法の指定があれば、まずはそれに従ってください。

書かないといけないこと・書いてはいけないこと

必ず書く項目

  • 表題(「退職届」または「退職願」)
  • 書き出しの「私儀」
  • 退職理由は「一身上の都合により」(自己都合の場合)
  • 退職を希望する年月日と、書類を提出する日付
  • 自分の所属部署・氏名
  • 宛名(会社の代表者名)

書かないほうがよいこと

  • 具体的な退職理由や会社への不満。 「給与が」「人間関係が」などは書きません。自己都合退職なら「一身上の都合」で足ります。
  • 転職先の会社名・業種。 記載する必要はありません。
  • 感情的な言葉・要望の羅列。 退職届は意思を簡潔に伝える書類です。交渉ごとは別の場で行います。
  • 日付や氏名の空欄・書き間違いの放置。 誤りがあれば新しい用紙に書き直すのが基本です(修正液での訂正は避ける)。

運営者の体験:書類より「いつ・どう切り出すか」だった

参考までに、当サイトの運営者が実際に退職したときの話を紹介します。退職願は手書きで用意しました。用紙は文具店で買ったB5サイズの、薄い横罫線が入った便箋です。書き方は当時いくつかの一般的なサイトを参考にした程度で、特別なことは何もしていません。理由の欄も「一身上の都合により」とだけ書きました。

振り返って一番大事だったのは、書類そのものより「出すタイミングと伝え方」でした。まず上司に「30分ほどお時間をください」と伝えて会議室を押さえてもらい、一対一で「1ヶ月後に退職したい」と切り出しました。ちょうど担当していたプロジェクトが一段落した時期を選んだこともあって、話は比較的落ち着いて進みました。

退職願自体はテンプレートどおりで十分で、気を配るべきは紙の書き方ではなく「誰に・いつ・どう伝えるか」だった——これが、実際に経験した運営者の実感です。

提出先・タイミングの実務的な注意点

  • 提出先は、まず直属の上司。 いきなり人事部に提出すると、上司の管理責任の観点から話がこじれることがあります。
  • 繁忙期・重要なプロジェクトの佳境は避ける。 法律上はいつでも申し出できますが、円満に進めるためには、提出のタイミングにも配慮したほうが無難です。
  • 控えを取っておく。 提出した書類のコピーや、提出日のメールでのやり取りなど、記録を残しておくと、後日の行き違いを防げます。

書類を出す前段階、つまり「内定が出てから、いつ・どの順番で上司に伝えるか」でつまずいている場合は、内定承諾から退職交渉までの時系列を先に読んでおくと、退職届を出すタイミングで迷わなくなります。

退職の切り出し方や、有給消化の交渉、退職後に必要な手続きまで、退職全体の流れを詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

内定が出てから、退職をどの順番で切り出すべきか迷っている方は、こちらの記事も参考になります。

まとめ

退職願は「お願い」、退職届は「一方的な意思表示」、辞表は「役員・委任契約の立場の人が使う言葉」——この違いを理解しておけば、どの書類を、いつ出すべきかで迷うことはなくなります。私がおすすめしたいのは、まず口頭で伝え、合意ができた段階で退職届を出すという二段階の進め方です。書類の意味を正しく理解したうえで、落ち着いて手続きを進めていきましょう。


※本記事は法律・公的機関の公開情報および一般的な傾向をもとに構成した一般的な情報提供であり、個別の状況を保証するものではありません。個別の労務・契約トラブルについては、労働基準監督署や弁護士など専門窓口にご相談ください。 ※本記事はアフィリエイトリンクを含みません。

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この記事を書いた人

キャリアランタン編集部

実際に転職・退職を経験した運営者が、自身の実体験と、公的機関の資料・各サービスの公式情報の調査をもとに執筆・確認しています。制度や手続きに関する記述は、可能な限り法令や公的機関の一次情報にあたり、体験に基づく所感と、事実として確認できる情報とを区別して書いています。

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