自己都合退職でも国民健康保険料が軽減される場合がある|非自発的失業者の軽減制度を整理

自己都合で辞めたので、国民健康保険料の軽減とかは関係ないですよね……?
理由によります。倒産・解雇はもちろん、病気や介護などやむを得ない事情での自己都合退職も、対象になりうる制度があります。
「自己都合で辞めたから、保険料の軽減なんて自分には関係ない」——そう思い込んでいる人ほど、実は見落としている可能性があります。国民健康保険には、非自発的な理由で失業した人の保険料を軽減する制度があり、対象は倒産・解雇だけではありません。病気やけが、妊娠・出産・育児、家族の介護などやむを得ない事情での自己都合退職も、含まれる場合があります(出典:厚生労働省「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」)。
この記事は厚生労働省の通知・関連資料と、複数自治体の国民健康保険案内ページ(公式サイト)にもとづいて整理したものです。保険料の額・軽減の可否・要件の該当判定は、最終的にお住まいの市区町村の国民健康保険担当課が個別に判断します。この記事だけで「自分は対象になる/ならない」を確定させないでください。この記事の使い方
この制度は「対象になる離職理由の範囲」と「仕組み」がやや複雑で、断定的な情報も出回りやすい分野です。そこでこの記事では、①自分が対象になりうる離職理由かどうかの確認方法、②仕組みの概要、③届け出の流れの3点に絞って整理します。保険料がいくら下がるかという金額の話はこの記事では扱いません(自治体・所得・世帯構成によって変わり、断定できないためです)。
この制度の正体:非自発的失業者の国民健康保険料軽減
この制度の正式な呼び名は「非自発的失業者に対する国民健康保険料(税)の軽減制度」です(自治体によっては「保険税」表記)。根拠は厚生労働省の通知(平成22年6月10日 保国発0610第1号)にあります。
平成22年(2010年)4月1日以降の国民健康保険への加入に適用されている制度です。この開始時期は厚生労働省の通知本文には明記がなく、松山市「国民健康保険料の軽減(非自発的失業者に係る軽減)」の案内で確認できたものです。
ここだけは押さえる
- 対象は「倒産・解雇」だけではなく、やむを得ない事情での自己都合退職も含まれる制度です(次章で詳述)。
- 仕組みは「保険料が下がる」というより、前年の給与所得を実際より低く見積もって保険料を計算し直すというものです。
- 自動的には適用されません。 国民健康保険に加入する際、自分で市区町村の窓口に届け出る必要があります。
出典:厚生労働省通知「非自発的失業者に係る国民健康保険料(税)の軽減措置について」(平成22年6月10日 保国発0610第1号)
対象になる離職理由:「自己都合=対象外」とは限らない
この制度の対象は、雇用保険の区分でいう「特定受給資格者」または「特定理由離職者」に当てはまる人です。専門用語だけ見ると難しく感じますが、内容を分解すると次のようになります。
| 区分 | 主な内容 | 「自己都合」扱いか |
|---|---|---|
| 特定受給資格者 | 倒産・解雇など、会社都合による離職 | いいえ(会社都合) |
| 特定理由離職者 | 雇止め、および体力の不足・心身の障害・疾病、妊娠・出産・育児、家族の介護、通勤困難など「正当な理由のある自己都合退職」 | 書類上は自己都合のことがある |
| 上記に当てはまらない自己都合退職 | 転職先が決まったための退職など、一般的な自己都合退職 | はい(対象外) |
出典:厚生労働省「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」
ここが見落とされやすいポイントです。 離職票の書類上は「自己都合」に見えても、体調やご家族の事情でやむを得ず退職した場合、雇用保険の手続き上は「特定理由離職者」として扱われることがあります。「自己都合だから関係ない」と自分で判断して確認すらしないのは、機会損失になりうるということです。
ただし、すべての自己都合退職が対象になるわけではない
「正当な理由のある自己都合退職」として認められるかどうかは、離職の事情がハローワークでどう区分されたかによります。単に「今の会社が合わないから辞めた」「転職先が決まったから辞めた」という一般的な自己都合退職は、原則としてこの制度の対象にはなりません。
出典:厚生労働省「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」
自分が対象かどうかを確認する方法
この記事を読んでいるだけでは、自分が対象かどうかは判断できません。確認できる材料は手元の書類にあります。
離職票・雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)を用意する。 ハローワークでの求職申込み手続きの中で受け取る書類です。手元にない、いつ受け取れるか分からない場合は、ハローワークに直接確認してください(この記事ではハローワークの具体的な手続き案内までは一次情報で確認できていません)。
「離職理由」欄のコードを確認する。 雇用保険受給資格者証には離職理由に対応するコードが記載されており、これが特定受給資格者・特定理由離職者に該当するかどうかの目安になります。コードの正確な読み方や、自分の区分が特定理由離職者に当たるかどうかの判断は、ハローワークの窓口で確認してください。
国民健康保険に加入する際、市区町村の窓口でこの制度について尋ねる。 「非自発的失業者の軽減(または軽減措置)の対象になりますか」と、雇用保険受給資格者証を持って聞くのが確実です。
編集部の判断: この制度は、自分から名乗り出なければ気づけない制度です。離職理由の区分は自分だけでは判断しきれないことがあります。迷ったら聞く、を基本にすることを勧めます。
仕組み:「保険料が下がる」の中身
対象になると、国民健康保険料(税)の計算のもとになる前年の給与所得を、実際の額の100分の30(30%)とみなして計算し直します。給与所得以外の所得(事業所得など)はこの軽減の対象になりません。
出典:渋谷区「国民健康保険料の軽減(非自発的失業者に係る軽減)」、中野区「非自発的失業者にかかる国民健康保険料の軽減」、大阪市「保険料の軽減・減免」
離職時点で65歳未満(64歳以下)であることも要件
離職時点で65歳未満(64歳以下)であることも、この制度の要件です。厚生労働省の通知本文には年齢の記載がありませんが、渋谷区・中野区・大阪市いずれの案内でもこの年齢要件が明記されています(出典は上記と同じ)。
保険料が実際にいくら軽減されるかは、この記事では書きません。 自治体ごとの保険料率、世帯の所得・人数によって計算結果が変わるため、「◯円下がる」という言い方はできません。窓口で試算してもらう、または自治体が公開している保険料の計算ツールを使うのが確実です。
いつまで軽減されるか・届け出の流れ
軽減が適用される期間は「離職日の翌日の属する月」から「その月の属する年度の翌年度末」までです。
終了時点(その月の属する年度の翌年度末まで)は、厚生労働省通知「非自発的失業者に係る国民健康保険料(税)の軽減措置について」の本文で確認できます。開始時点(離職日の翌日の属する月から)の表現は通知本文にはなく、中野区「非自発的失業者にかかる国民健康保険料の軽減」の記載と一致する内容です。
重要:自動的には適用されません
この軽減制度は、国民健康保険に加入する際に、自分で市区町村の窓口へ届け出て初めて適用されます。 会社の退職手続きやハローワークでの求職申込みをしただけでは、自動的に反映されません。
出典:中野区「非自発的失業者にかかる国民健康保険料の軽減」(「届出により軽減が受けられます」と明記)
退職・離職。 ハローワークで求職の申込みをし、離職票・雇用保険受給資格者証を受け取ります。
国民健康保険に加入する(家族の扶養に入る・任意継続を選ぶ場合はこの手続き自体が不要)。 加入手続きは退職後できるだけ早く行うことを勧めます。具体的な提出期限は、この記事では一次情報を確認できていないため明記しません。お住まいの市区町村の窓口・公式サイトで確認してください。
国保加入の手続きと同時に、非自発的失業者の軽減について窓口で申し出る。 雇用保険受給資格者証を提示し、対象になるか確認したうえで届け出ます。加入手続きとは別に、軽減専用の届出書が必要な自治体もあります(例:中野区は「非自発的失業に係る国民健康保険料等の軽減届」という専用の届出書を用意しています。出典:中野区「非自発的失業者にかかる国民健康保険料の軽減」)。書式・名称は自治体ごとに異なるため、お住まいの窓口で確認してください。
編集部の判断: 離職の手続き(ハローワーク)と、保険料軽減の届け出先(市区町村の国保担当課)は、窓口もタイミングも別です。ハローワークで案内されなかったからといって、対象外と決まったわけではありません。この「窓口が分かれている」ことが、この制度が知られにくい最大の理由だと編集部は考えます。
国民健康保険と任意継続、どちらが得か
退職後の健康保険には、大きく分けて次の3つの選択肢があります。
- 国民健康保険に加入する(今回の軽減制度が使えるのはこちら)
- 健康保険の任意継続(在職中に加入していた健康保険を、退職後も一定期間続ける制度)
- 家族の被扶養者になる(要件を満たす場合)
任意継続は、それまで加入していた健康保険をそのまま続ける制度で、国民健康保険とは別の枠組みで保険料が決まります。この記事では任意継続側の制度詳細(保険料の算定方法・加入できる期間など)を一次情報で確認できていないため、具体的な仕組みの説明は割愛します。どちらが有利かは、退職時の給与水準・扶養家族の有無・お住まいの自治体の国民健康保険料率によって変わるため、「国保のほうが必ず安い」「任意継続のほうが必ず得」とは言い切れません。
任意継続を選ぶ場合の条件・保険料の決まり方は、退職前に加入していた健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)に直接確認してください。編集部としては、金額を比較せずにどちらかを選ぶことは勧めません。国保・任意継続の両方で見積もりを取ってから決めるべきだと考えます。 国保を選ぶ場合は、この記事で紹介した軽減制度が使えるかどうかも、見積もりに含めて確認してください。
この制度が知られていない理由
「そんな制度、聞いたことがない」という人が多いのには理由があります。編集部は次の3点が主な原因だと考えます。
- 離職の手続き(ハローワーク)と、保険料軽減の届け出先(市区町村の国保窓口)が別の場所にある。 離職時にハローワークで案内されるとは限りません。
- 「保険料が下がります」ではなく「給与所得を30%とみなして計算し直す」という技術的な説明のため、自分に関係あるのか直感的に分かりにくい。
- 在職中は会社の健康保険(社会保険)に入っている人がほとんどで、国民健康保険の仕組み自体になじみがない。
届け出をしないまま、軽減されるはずの期間の保険料を満額払い続けてしまう人は一定数いるはずだと編集部は考えます。「対象になるかもしれない」と思ったら、まず窓口で聞くこと。それだけで防げる損失です。
退職後の他の手続きもあわせて確認する
国民年金の保険料にも、失業を理由にした免除・納付猶予の仕組みがあります。国保の窓口と同じ市区町村で手続きできる場合が多いので、あわせて確認しておくと二度手間になりません。

国民健康保険の軽減以外にも、退職後にやるべき手続きはいくつかあります。全体の流れを先に押さえておきたい方はこちらをどうぞ。

失業手当(基本手当)がいつ・どれくらいの期間で受け取れるかは、2025年4月の制度改正もふまえてこちらで整理しています。

退職日から逆算して、国民健康保険の加入手続きや失業給付の手続きの時期をまとめて確認したい方は、こちらのツールも参考にしてください。
まとめ
国民健康保険には、非自発的な理由で失業した人向けの保険料軽減制度があります。対象は倒産・解雇だけでなく、雇止めや、病気・妊娠出産育児・介護・通勤困難など「正当な理由のある自己都合退職」も含まれる場合があります。仕組みは、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算し直すというものですが、自動的には適用されず、国民健康保険に加入する際に自分で市区町村の窓口へ届け出る必要があります。
「自己都合で辞めたから関係ない」と決めつける前に、離職票・雇用保険受給資格者証の離職理由を確認し、国民健康保険の窓口で一度尋ねてみることをおすすめします。対象になるかどうか、要件を満たすかどうかの最終判断は、お住まいの市区町村の窓口です。
※本記事は厚生労働省の公開通知・関連資料と、複数自治体(渋谷区・中野区・大阪市・松山市)の国民健康保険案内ページをもとに、非自発的失業者に対する国民健康保険料の軽減制度を一般的に整理したものであり、個別の該当判定・保険料額を保証するものではありません。離職理由の区分や軽減の適用可否は、最終的にハローワークおよびお住まいの市区町村の国民健康保険担当課が個別に判断します。制度は今後改正される可能性があるため、手続きの際は必ず最寄りの窓口・公式情報で最新の内容をご確認ください。 ※本記事はアフィリエイトリンクを含みません。
この記事の基準日・出典(公的機関)
- 通知の根拠日:平成22年6月10日(厚生労働省通知 保国発0610第1号)
- 制度の適用開始時期:平成22年(2010年)4月1日以降の国民健康保険への加入から(出典:松山市案内ページ。厚労省通知本文には明記なし)
- 記事の内容基準日:上記通知および各自治体案内ページの確認時点の内容
- 最終確認日:2026年8月14日
- 厚生労働省通知「非自発的失業者に係る国民健康保険料(税)の軽減措置について」(平成22年6月10日 保国発0610第1号)
- 厚生労働省「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」
- 渋谷区「国民健康保険料の軽減(非自発的失業者に係る軽減)」
- 中野区「非自発的失業者にかかる国民健康保険料の軽減」
- 大阪市「保険料の軽減・減免」
- 松山市「国民健康保険料の軽減(非自発的失業者に係る軽減)」